メルマガ(アーカイブ)
(第42話) 社員旅行
「次の連休に、みんなが旅行に行きたがっています!」
リーダーのユンとアカウンターのチャーさんが私に言いました。
ベトナムではテト(旧正月)以外にはほとんど連休というものがないため、
4月30日の南部解放記念日と5月1日のメーデーによる2連休は貴重な連休です。
社員達は、この連休を利用して社員旅行に行きたいようなのです。
「旅行ね~。 いいじゃない。 行っといでよ!」
「で、 どこへ行くの?」
「みんなは、ダラットへ行きたいと言ってます。」
「えっ! ダラットって、えらい遠いんじゃない!?」
ダラットは、ベトナムの軽井沢!ともいわれる高原にある避暑地で、ベトナム
のタウン情報誌「SKETCH」には、次のように紹介されています。
「ダラット最大の魅力はフレンチヴィラが建ち並ぶその街並み。
およそ2000軒と言われる家々には、当時の家主達の故郷への思いが込めら
れていて、どれひとつとして同じものはない。
幸いにも大きな変化もなく往年のまま残っているのは、ヴィラのほとんどが
公的機関や政府関係者の所有となっているから。
外観の改築も禁止されていて、庭園部分を含めた景観を保護する義務がある
という。
そして今、ここへきて長年廃墟であったヴィラを観光資源として復活させる
動きが見られてきた。
改装、整備を施し、リゾート施設にするというもので、丘の上という立地の
不便さはレストランなどを併設してフォロー。
他の都市とはひと味違う、個性的な宿という点で注目を集めている。
ベトナムでヴィラが一番似合うダラット。
訪れるたび、いつもワクワクさせてくれる。」
私も、かねてより機会があれば行ってみたいと思っていた観光地です。
「・・・で、交通手段はどうすんの?」
「路線バスがありますので、それで行きます。」
「ウッソだろ~! 何時間かかんの?」
「12時間から14時間かかります。」
「大丈夫かい~???」
「前にバナやフエへ行ったときも、全員、車酔いでひどかったじゃない!」
「ハンさんなんかバスで14時間なんて、絶対持たないぜ!」
「それに・・、 14時間もかけてほうほうの体で・・、
やっとこさダラットまで辿り着いたはいいが・・、
あたりは既に真っ暗で・・・、
安宿に泊まって飯食って・・・、
ビール飲んでトランプくらいやって・・・、
そしたら、もう、おねんねで・・・、
翌朝、またバスで14時間かけて帰ってくるの?」
「しんどいぜ~!」
「何しにダラットまで行くのかわかんなくなるよ・・。」
「例えばさ・・、5月2日は土曜日だから2日も休みにして一日くらい
ゆっくり出来るスケジュールにするとかしないと、そりゃ無理だよ!」
「なんだったら、田中君に言っておくからさ、2日も休みにすれば・・。」
「旅行の実行委員会を作って、行程表と予算をよく健闘してみな!」
「どう考えても、最低でも2泊3日の行程だろう!」
私はそう言ってユンたちに再検討を促しました。
帰国後、ユンから次のようなメールが来ました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
社長
こんにちは
今桜が咲いていますね。
しかし雪も降っていますね。
ダナンは暑いです。
旅行の件について、
「行くかどうか行かないほうがいいか?」 まだ考えています。
でも、みんなが行きたいんですね。
しかし、ダナンからダラットへの道が危ないし、
旅行の経費もたくさんかかります。
バス代のみを聞きましたが、8.000.000vndかかります。
もし、スケジュールと予算が合理なら、社長に報告します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その後、次のようなメールのやりとりをしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ユンさん
御苦労様です。
高山の桜はまだ咲きませんし、ここ2~3日は雪です。
旅行に関しては、みんながダラットへ行きたいのであれば
行っても良いですが、かなり疲れますよ。
車に弱い人には相当辛い旅行になるのではないでしょうか?
もう少し、近いところへ行くことにしたらどうでしょう?
サブリーダーやアカウンターとよく相談して決めてください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
旅行の件について、
みんなと相談して決めました。
DALATへいきます!
だれも行きたいんですので、車に弱い人は薬を持っていきます。
旅程は4月30日から5月4日まで予定ですけれども5月2日は仕事です。
だから、4月4日を振替出勤にしてもいいですか?
旅行の経費は会社の以外、みんなも出し合います。
私はバスを予約しました。
しかし泊まるところはまだ探しています。
社長の指示はどうですか?
よろしくお願いします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Vietnam Dairoku の社員達と初めてパーティーを催した日、社員一人一人に
自己紹介のなかで趣味と希望を披露してもらった際、ほとんどの社員達が
「旅行へ行きたい!」などと言っていたのを思い出します。
また先日、おみやげとして社員一人一人に「旅の指さし会話帳」を配ったの
ですが、私と視線が合うたびに「指さし会話帳」を開いて「旅行へ行きたい」
とか「日本へ行きたい」などという部分を指さしてくることから、彼らは相当
「旅行!」というイベントに餓えていることは事実です。
また、よく日曜日に行っている小旅行で、「ここへ来るのは何度目?」と尋ね
ると、まずほとんどの社員が「初めてです。」と答えるところから、まだまだ
家族或いは友人と旅行をするという経済的な余裕はないのでしょう。
連休のダラット旅行を楽しみにしながら毎日毎日頑張ってくれる社員達の顔を
想像しながらメールを打ちました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ユンさん
わかりました。
みんなで旅行を楽しんできてください。
私からも、3,000,000VNDカンパします。
これで、食事代などの足しにして下さい。
長時間のバスでの移動は予想以上に疲れると思います。
身体に気をつけて行ってきて下さい。
また、たくさん写真を撮ってきて見せてくださいね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
多少、私にも余裕が出てきたような気がいたします。
(Mr.ホー)