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(第39話) ダナン市のビジョン
ダナン市政府は、口を開くと「ダナン市は、風光明媚なロケーションであり、
観光・リゾート開発で大きく発展したい。」旨の発言をしています。
確かに、ダナンまわりにはミーソン遺跡、ホイアン、フエと3つの世界遺産が
あり、また、街の東側には手つかずの海岸エリアが広がり、リゾートホテルや
ゴルフ場などリゾート関連の開発案件が目白押しとなっています。
日刊ベトナムニュースによりますと・・、
●ダナン:ゴルフ場・海岸リゾートが着工(2008/01/28 JST配信)
投資ファンドのビナキャピタルは25日、ダナン市グーハインソン区ホアハイ
地区で、ゴルフ場と海岸リゾート地区を着工した。投資額は1億3000万米ド
ル(約140億円)。総面積260ヘクタールの敷地内に、ゴルフ場2カ所、複数
の高級ホテル、別荘300棟などを建設する。完成は2012年の予定。
●ビナキャピタル、米マリオットとホテル運営契約(2008/09/16 JST配信)
米マリオットインターナショナルと投資ファンドのビナキャピタルは15日、
ビナキャピタルがダナン市で建設予定の高級ホテルの運営契約を締結した。
部屋数271室の5つ星ホテル「JWマリオット・ダナン」の着工は来年半ば、
完成は2011年になる見込み。
ビナキャピタルは同市の260ヘクタールの敷地で複合観光地区を建設してお
り、今年1月にゴルフ場が着工されている。
●蘭ライフリゾート、ダナンでリゾート開発(2008/09/30 JST配信)
オランダのホテル運営会社ライフリゾートと地場ホアンチャー観光社はこの
ほど、ダナン市に高級リゾート地区「ライフリゾート・ダナン」を建設する
ことで合意した。投資額は約2500万米ドル(約26億円)。このリゾート地区
は面積4.5ヘクタールで、ビラ15棟、レストラン、スポーツジム、スパ、カ
ジノ、会議場などが建設される。来年秋にオープンする予定という。
●ダナン:「トゥイトゥー都市区」建設計画を発表(2008/11/21JST配信)
ダナン市人民委員会はこのほど、同市リエンチエウ区とホアバン郡にまたが
る面積約342ヘクタールの敷地での「トゥイトゥー都市区」建設計画を発表
した。投資主体はチュンナム投資建設株式会社で、投資額は約16億米ドル
(約1520億円)。同都市区には別荘、高級マンション、ホテル、病院、大学
スポーツ施設などが建設される。来年着工し、2015年に完成の予定。
私はダナン市の「観光・リゾートでのまちおこし」というビジョンについては
いささか懸念を抱いています。
まず第一に、これらの開発計画が全てリーマンショック以前に計画されたもの
であること。
先日、年間観光客3000万人と一躍、ラスベガスを抜いて世界一のカジノ天国と
なったマカオへ視察に行ったところ、建設途中で建設作業員を大量解雇し工事
再開の目処が立っていない建設中の大型ホテルがスケルトンのままであちこち
に佇んでいる様子を目にしました。
理由は、リーマンショック以来、中国大陸からの観光客が落ち込んでいるのと
運営主体の資金調達に支障が出ているためとのこと。
おそらく、(米)マリオットにしても(蘭)ライフリゾートにしても世界金融
不況の影響が無いはずはなく、開発計画の見直しがすでに行われているのでは
ないかと思われます。
次に、観光・リゾート産業においては充実したハードもさることながらお客を
もてなすためのソフトインフラが極めて重要です。
にも拘わらず現在のベトナム、特にダナンにはそのソフトインフラが決定的に
欠如しているからです。
箱だけあっても人は集まりません。
現在、ベトナムにある資源は、「安い労働力!」だけです。
比較的優秀で、比較的勤勉だと言われるCheap Labor の存在があるからこそ、
この国は6%縲鰀8%の成長を達成することが出来ています。
しかしベトナムへ進出した企業は、まだまだ付加価値が低い労働集約型産業が
中心であるため、原材料高の影響もありベトナム全体の貿易収支は大幅な輸入
超過。
にもかかわらずベトナム政府は、毎年巨額の貿易赤字を生み出し、年率20%を
越えるインフレ対策に有効な手を打てぬまま、給料上げろ!税金払え!と、
毎年最低賃金を上げ続けたり、税法の見直しだ、とかなんだかんだといって、
とりあえず外資からボッたくって帳尻を合わせることばかりを考えているよう
にしか思えません。
「この先、この国は、何で飯を食っていこうとするのでしょう・・?」
「そのためには、どのようなインフラが必要なのでしょう・・?」
「そしてそれを、誰の手を借りどのように具体化していくのでしょう・・?」
ダナン市にあっても同様です。
今ある資源が「安い労働力!」だけであるならば、「安い労働力!」という
商品価値を落とすような施策は講ずるべきではないし、外資に対してはダナン
市ならではの様々な便益を提供して企業誘致に邁進せねばなりません。
「うちは、リゾートでいくんだもんね縲怐B」などとうそぶいていても、観光や
リゾートは水商売であり人気商売ですから、今回のように一旦風雲急を告げる
ようなことになれば、「やっぱ!や縲怩゚た!」の進出計画白紙宣言の嵐になる
ことは必然でしょう。
ホーチミンの空港やベトナム航空の機内誌に載っているダナン市リゾート開発
計画の完成予想図を見るたびに・・、
マカオの「借金コンクリート!」と化した大型スケルトンホテルの姿が・・、
どうしてもダブってしまうのです。
(Mr.ホー)